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-なぜを5回繰り返す請求項の書き方- 第117号

2016.12.09 カテゴリー/ Column 

こんにちは。田村良介です。


トヨタ自動車の元副社長をされていた大野耐一さんの
『トヨタ生産方式 脱規模の経営をめざして』という書籍があります。

大野耐一さんは、トヨタ生産方式の生みの親とも呼べる方だそうです。


この書籍の中でも紹介されていますが、
大野耐一さんが提唱したと言われる考え方として、
「なぜを5回繰り返す」というものがあります。


例えば、

何らかのトラブルが発生したときに、
「なぜを5回繰り返す」ことで、トラブルの真の原因を探ることができる、

というものです。


なぜを5回繰り返さないと、すぐに思いつく答えを結論としてしまい、

表面に見える状況だけについて、対応することになります。


結局、根本的な解決はできず、
何度も問題が繰り返されることになります。



ところで、うちには、4歳の息子がいますが、

母親が叱ると言うことを聞くのに、私が叱ると、私に立ち向かってきます・・・。


『なぜ、私が叱ると、立ち向かってくるのか?』
   ↓
 私を友達だと思っているから。
   ↓
『なぜ、友達だと思っているのか?』
   ↓
 父親としての威厳を示すことができていないから。
   ↓
『なぜ、威厳を示すことができていないのか?』
   ↓
 息子と一緒になって、バカな遊びをしているから。


といったように、真の原因を探りあてることができます。


それはさておき、

「なぜを5回繰り返す」ことで、
ものごとの本質を探りあてることができるのだと思います。



例えば、発明の捉え方についても、

なぜを繰り返すことで、発明の本質を探りあてることができます。


『なぜ、断面が六角形の鉛筆は、
 断面が円形の鉛筆よりも転がりにくいのか?』
   ↓
 断面が多角形だから
   ↓
『断面が多角形だとなぜ転がりにくいのか?』
   ↓
 断面の中心から外周までの距離が異なるから
   ↓
『なぜ、中心から外周までの距離が異なると、
転がりにくくなるのか?』
   ↓
 転がる際に、重心の高さが変わって、
 水平方向に移動する運動エネルギーが、
 垂直方向に移動する運動エネルギーに変換されて
 消費されるから。


断面が多角形だから、という結論でとまっていた場合、

請求項は、「断面が多角形の鉛筆。」

となります。


断面の中心から外周までの距離が異なるから、という結論の場合、

請求項が、
「中心から外周までの距離が異なる形状の断面を有する、鉛筆。」

といったような感じになります。

この場合、断面が多角形以外のもの、
例えば、断面が楕円形のものも含まれます。


楕円形の鉛筆について、商業的に需要があるかどうかは別として、

『なぜ?』『なぜ?』と転がりにくい原因を追求することで、

発明の本質に近づきますし、権利範囲もより広がります。 


六角形の鉛筆が転がりにくい理由として、

転がる際に重心の高さが変わる、という結論にいたった場合には、

請求項が・・・。


すみません。
大変そうなので、割愛させてください(笑)。



このように、「なぜを5回繰り返す」ことで、

発明の本質的な要素を探りあてることができるのではないか
と思います。




|◆今日のポイント◆
└───────────────────

 ☆発明を捉える際には、「なぜを繰り返す」。

 ☆「なぜを繰り返す」ことで、
  発明の本質的な要素を捉えた請求項を
  記載することができるのではないか。
  
 ☆結果として、より広い権利範囲の請求項を
  記載することができる。

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