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ビジネスモデル特許の知識

ビジネスモデル特許の事例

ビジネスモデル特許とは、いったいどういうものを指すのでしょうか。

ビジネスモデル特許とは、そのビジネスモデルを実施する際の技術的な工夫についての特許です。

 

実は、今までにない新しいビジネスの方法(つまり、ビジネスモデル)を考え付いたとしても、ビジネスモデルそのものについて、特許を取得することはできません。ただし、ビジネスモデルを実施する際の技術的な工夫であれば、特許を取得することができます。

 

特許法では、発明を『自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度なもの』と定義しています。つまり、発明は、『技術についての工夫』ということができます。ビジネスモデルそのものは、人為的な取り決めであり、自然法則を利用したものではなく、特許法上の発明ではないと取り扱われます。

例えば、ピザの宅配ビジネスで、注文をしてから30分以内に届けられなければ、ピザを無料にする、というビジネスモデルそのものは、特許にはなりません。しかし、ピザを効率的に配達するために、どの配達先にどの順番で配達するかを計算できるソフトウェアであれば、特許になる可能性はあります。

 

このように、ビジネスモデルを実行するための技術的な工夫、特に多いのが情報技術(IT)を活用した工夫が、ビジネスモデル特許の対象となります。

 

ここでは、ビジネスモデル特許の具体例をご紹介していきます。

examples

ビジネスモデル特許 事例1:パーフェクト口座特許

(特許3029421号 特許権者:株式会社三井住友銀行 出願日:1998年10月14日)

 

振込人と関連づけられた複数の関連口座を用いて振込を行う振込処理システム

このビジネスモデル特許は、株式会社住友銀行により1998年10月に出願され、2000年2月に特許の登録がされたものです。

 

企業から商品を購入した場合、この銀行の指定する口座に料金を振り込むことが行われています。1つの企業に対して大勢の人からの振込がある場合、企業は、誰が振込を行ったのかを特定するのが難しくなります。企業が支払人コード等を発行して、そのコードを入力してもらうようにすることもできますが、コードの入力を忘れたり、コードを間違えて入力してしまうことがあります。

 

この発明では、振込人毎に口座番号の異なる複数の仮想口座を設けられ、それぞれの振込人から仮想口座に振り込まれた資金は本口座に入金されます。振込人と仮想口座番号とともに、仮想口座への振込情報が出力されます。

従来は、振込を受ける口座の所有者が、振込人名のみで、振込人を特定する必要がありました。このパーフェクト特許を利用すれば、口座の所有者は、過度な負担をすることなく振込人を特定することができます。

 

パーフェクト口座特許は、出願から20年が経過した2018年10月に特許権の存続期間が満了しています。

パーフェクト口座特許

<発明のポイント>

  1. 複数の仮想口座に振り込まれた資金を、本口座に入金処理を行う
  2. 仮想口座への振込情報を、振込人と関連付けられた仮想口座番号を付加して、出力する
  3. 出力された振込情報を本口座の振込情報として格納する

 

<発明の効果>

  • 仮想口座への振込を、本口座への振込として処理することができる
  • 振込人の特定を確実に、利用者の過度の負担なく行うことができる

ビジネスモデル特許 事例2:チケット発券システム

(特許4209221号 特許権者:ソニー株式会社 出願日:2003年2月28日)

 

チケット発券システム

このビジネスモデル特許は、2003年2月に出願され、2008年10月に特許の登録がされたものです。

 

航空券のチケット予約は、頻繁に変更されます。しかし、チケット予約情報を変更するたびに、ICカード内のチケット情報を書き換えることは現実的ではありません。

 

マイレージ番号が記録されたクレジットカードを利用して、クレジットカード番号とマイレージ番号とを関連付けてチケット予約を行うことができます。チェックイン端末では、カードを読み取ると、クレジットカード番号から予約情報を照会し、チケットの発券を行います。

 

このビジネスモデル特許は、現在も継続して存続しています。

ticket-system

<発明のポイント>

  1. 情報の読み出し/書き込みが可能で、予めマイレージ番号と関連付けられたクレジットカード番号が記録されたカード
  2. マイレージ番号に基づいてチケット予約を受け付けるとともに、カードからクレジットカード番号を読み出して,クレジットカード番号を認証し、クレジットカード番号とマイレージ番号とを関連付けてチケット予約を行うユーザ端末
  3. マイレージ番号とクレジットカード番号とを関連付けてチケット予約情報を管理するチケット予約管理サーバ
  4. カードからクレジットカード番号を読み出し、クレジットカード番号に関連付けられたチケット予約情報を予約管理サーバに照会し、チケット発券を行うチェックイン端末

 

<発明の効果>

  • ユーザが手間をかけることなく、チケットを発券することができる

ビジネスモデル特許 事例3:レンタル商品返却システム

(特許4854697号 特許権者:カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社 出願日:2008年3月31日)

 

レンタル商品を配送者を通じてレンタル店に返却するためのシステム

このビジネスモデル特許は、DVDなどのレンタル事業で有名なTSUTAYAの特許です。2008年3月に出願がされ、2011年11月に特許の登録がされています。

 

通常、レンタル店でCDやDVD等の商品を借りたユーザは、レンタル期間が経過するまでに、そのレンタル商品をレンタル店へ返却する必要があります。ただ、多くの方が経験されているように、レンタル期間が経過するまでに、レンタル店へもう一度行くのは、煩わしいものです。

 

そこで、配送者を通じてレンタル商品を返却するという発想が生まれます。しかし、配送者を通じて商品を返却する場合、配送者がユーザから商品を引き受けてから、レンタル店へ商品が配送されるまでに時間がかかるため、商品の返却期限の管理が難しくなるという問題がありました。

 

この発明は、そのような問題を解決するために、生まれたものです。

具体的には、レンタル商品の返却に配送を利用する場合に、配送者がレンタル商品を回収したことを認証し、回収した日・時間帯をレンタル店に知らせるものです。レンタル店は、店舗にて商品が回収される前に、商品が返却されたことを知ることができます。

 

このビジネスモデル特許は、現在も継続して存続しています。

レンタル商品返却システム

<発明のポイント>

  1. レンタル商品に対して固有の識別子を付与する
  2. レンタル店において識別子と関連づけて貸し出しデータを認証する
  3. 投函されたレンタル商品が配送者に回収された際に、識別子と関連づけてレンタル商品を回収したことを認証する
  4. 配送者がレンタル商品を回収した日・時間帯からなる回収認証データを識別子と関連づけてレンタル店に知らせる
  5. レンタル店が回収認証データの回収日・回収日時を返却日データとして認証する
  6. レンタル店にレンタル商品が配送された際に識別子と関連づけてレンタル商品が実際に返却されたことを認証する

 

<発明の効果>

  • 配送者を通じてレンタル商品を返却した場合においても、レンタル商品の返却期限の管理・商品の追跡ができる

ビジネスモデル特許 事例4:自動仕訳システム

(特許5936284号 特許権者:フリー株式会社 出願日:2014年7月14日)

 

クラウドコンピューティングによる会計処理を行うための会計処理方法

このビジネスモデル特許は、2014年7月に出願され、2016年5月に特許の登録がされたものです。

 

通常、企業は、一定期間内における収入及び支出をもとに、利益又は損失を算出して、賃借対照表(B/S)、損益計算書(P/L)等の財務諸表を作成することが求められます。しかし、企業活動において発生した取引を勘定科目に仕訳し、これを登録する作業は、中小企業や個人事業主にとっては、非常に負担の大きいものです。

 

この特許は、クラウドコンピューティングによる会計処理を行うためのプログラムに関するものです。会計処理の対象である各取引の内容について形態素に分解して、各形態素についての勘定科目の出現頻度をもとに、その取引を、適切な勘定科目に自動的に仕分けをすることで、企業の負担を軽くすることができるものです。

 

このビジネスモデル特許は、現在も継続して存続しています。

自動仕訳システム

<発明のポイント>

  1. ウェブサーバが、明細データを取引ごとに識別する
  2. ウェブサーバが、各取引の取引内容の記載をキーワードに分節し、各キーワードに対応づけられた勘定科目の出現頻度を参照して、特定の勘定科目に自動的に仕訳する
  3. ウェブサーバが、日付、取引内容、金額及び勘定科目を少なくとも含む仕訳データを作成する
  4. 作成された仕訳データは、ユーザーがウェブサーバにアクセスするコンピュータに送信され、コンピュータのウェブブラウザに、仕訳処理画面として表示される

 

<発明の効果>

  • 簡便に会計処理することができる

ビジネスモデル特許 事例5:ワンクリック特許

(特許4959817号 特許権者:Amazon.com,Inc. 出願日:1998年9月14日)

 

アイテムを注文するためのクライアント・システムにおける方法及びアイテムの注文を受け付けるサーバ・システムにおける方法

このビジネスモデル特許は、1998年9月14日に出願され、2012年3月30日に特許の登録がされたものです。

 

ECサイトで商品を購入する際、多くの場合、購入ボタンをクリックすると、送付先の住所や支払い方法の入力をする画面に移り、これらの情報を入力することで決済が完了します。ただ、同じECサイトで繰り返し商品を購入する場合、送付先の住所や支払い方法も同じであるため、ユーザにとって何度も住所や支払い方法を確認するのは煩わしいものです。一方、購入ボタンをクリックするだけで決済が完了すると、ユーザにとって利便性が高いものとなります。

 

この特許は、ワンクリックで商品を購入することができるようにしたもので、さらに、同じユーザから、ワンクリックで複数の注文があった場合に、複数の注文を1つにまとめる処理をするものです。

ワンクリックで商品を購入できると、例えば、同じ日に、複数の商品を購入した場合、複数の注文が受け付けられることになります。そうすると、購入した商品が、1つの配送物でまとめられるものであっても、複数の配送物として届くことになります。ユーザにとっては利便性がよくありませんし、配送のための費用も余分にかかることになります。

 

つまり、この特許は、ワンクリックで商品を購入する際に、複数の注文を1つの注文にまとめることでユーザの利便性を向上させたものです。

 

ワンクリック特許は、出願から20年が経過した2018年9月に特許権の存続期間が満了しています。

Amazon-1-click特許

<発明のポイント>

  1. アイテムを特定する情報と、特定されたアイテムを注文するのに実行すべきシングル・アクションの指示部分を、ディスプレイに表示する。
  2. シングル・アクションは、アイテムの注文を完成させるために要求される唯一のアクションであり、シングル・アクションの実行に続いて注文の確認を要求しない。
  3. シングル・アクションが実行されることに応答して、アイテムの注文要求とクライアント識別子とを、サーバ・システムに送信する。
  4. サーバ・システムが、シングル・アクション注文要求と、クライアント識別子に関連付けられた1または複数の以前のシングル・アクション注文要求とを組み合わせ、1つの注文に結合する。

 

<発明の効果>

  • シングル・クリック(1- click )するだけで商品を注文できる
  • 複数の注文を1つにまとめることができる

ビジネスモデル特許 事例6:いきなりステーキ!のステーキ提供システム

(特許5946491号 特許権者:株式会社ペッパーフードサービス 出願日:2014年6月4日)

 

ステーキの提供システム

このビジネスモデル特許は、2014年6月4日に出願され、2016年6月10日に特許の登録がされたものです。

 

お客様の要望に応じて好みの量のステーキを提供するステーキ店では、どのステーキがどのお客様のものであるかを、店舗スタッフが混同してしまう場合があります。

 

この発明では、計量した肉の量とテーブル番号とを記載したシールを計量機が出力し、このシールを他のお客様のステーキと区別するための印として用いることで、店舗スタッフが、お客様に提供するステーキを、他のお客様のものと混同することのないようにしたものです。

 

このビジネスモデル特許は、現在も継続して存続しています。

steak-system

<発明のポイント>

  1. お客様のテーブル番号が記載された札
  2. お客様の要望に応じてカットした肉を計量し、計量した肉の量とテーブル番号を記載したシールを出力する計量機
  3. お客様の要望に応じてカットした肉を他のお客様のものと区別するためのシール

 

<発明の効果>

  • お客様の要望に応じて好みの量のステーキを提供するステーキ店において、店舗スタッフが、お客様に提供するステーキを混同することなく提供できる

ビジネスモデル特許 事例7:マピオン特許

(特許2756483号 特許権者:凸版印刷株式会社 出願日:1995年7月14日)

 

コンピュータシステムにより広告情報の供給を行なう広告情報の供給方法

このビジネスモデル特許は、1995年7月14日に出願され、1998年3月13日に特許の登録がされたものです。今から20年以上前に出願されたもので、すでに特許権は消滅しています。

 

雑誌等のイラストマップなどで商店等の位置と、その広告内容を掲載することが、従来から行われています。しかし、この方法では、広告の出稿を依頼してから実際にその広告を掲載した雑誌等が流通するまでに時間がかかる、という問題がありました。

 

この発明は、広告の依頼者が広告情報を入力すると、地図上の位置と広告情報を関連付けて記憶し、インターネットでユーザが閲覧できるようにすることで、依頼者が、広告の掲載を希望してから実際に広告がだされるまでのタイムラグを短くすることができるものです。

 

マピオン特許は、出願から20年が経過した2015年7月に特許権の存続期間が満了しています。

マピオン特許

<発明のポイント>

  1. 広告依頼者に対して、広告情報の入力を促し、地図情報に基づいて地図を表示して、地図上に広告対象物の位置指定を促す
  2. 地図上において位置指定された広告対象物の座標を、広告情報と関連づけて記憶する
  3. ユーザに対して、地図情報に基づく地図を表示し、広告対象物の座標に相当する地点に、広告対象物を表示して、広告対象物の選択を促す
  4. 選択された広告対象物に関連づけられた広告情報を読み出す
  5. 読み出された広告情報を、ユーザに対して出力する

 

<発明の効果>

  • 広告記載依頼から実際の広告頒布までのタイムラグを短くできる
  • 小規模な事業形態の広告依頼者であっても広告が出しやすい

ビジネスモデル特許 事例8:エリアターゲティング特許

(特許3254422号 特許権者:株式会社ジェイ・キャスト 出願日:1998年6月26日)

 

ウェブページ閲覧方法およびこの方法を用いた装置

このビジネスモデル特許は、1998年6月26日に出願され、2001年11月22日に特許の登録がされたものです。今から20年以上前に出願されたもので、すでに特許権は消滅しています。

 

通常、Webページは、どの地域の端末から閲覧しても同じ情報が表示されます。しかし、広告や天気予報などの情報は、閲覧する地域にあわせて表示される内容が変わることが望ましい場合があります。

 

この発明は、ユーザ端末のIPアドレスからアクセスポイントが属する地域を判別し、その地域に対応したウェブ情報を、ユーザ端末で閲覧できるようにしたものです。

 

エリアターゲティング特許は、出願から20年が経過した2018年6月に特許権の存続期間が満了しています。

エリアターゲティング特許

<発明のポイント>

  1. IPアドレスと地域とが対応したデータベースを用いて、ユーザ端末のIPアドレスを所有するアクセスポイントが属する地域を判別する
  2. 判別された地域に基づいて、地域に対応したウェブ情報を選択する
  3. 選択されたウェブ情報を、IPアドレスが割り当てられたユーザ端末に送信する

 

<発明の効果>

  • 同一のURLでも、ユーザの発信地域ごとに異なるWebデータの送信ができる

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