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ビジネスモデル特許の知識

ビジネスモデル特許を侵害するとどうなるか?

infringement

1.どのような場合に、ビジネスモデル特許を侵害することになるか

特許権は、その発明を独占的に実施できる権利です。特許権を有していない第三者が、その発明を実施すると、特許権を侵害することになります。

 

それでは、どのような場合に、ビジネスモデル特許の特許権を侵害することになるのでしょうか。

 

特許権の侵害となるには、まず、そのビジネスモデル特許が有効なものである必要があります。特許権の有効期間は、通常、特許出願の日から20年までです。20年以上前に特許出願したものであれば、一部の例外を除き、特許権の侵害となることはありません。また、特許権を維持するためには、毎年分の特許料が支払われている必要があるのですが、途中で、特許料の支払いをせずに、特許権が消滅している場合もあります。

 

ですから、自社のサービスと近い内容のビジネスモデル特許が存在することを発見したとしても、その特許が有効なものでなければ、特許権の侵害にはなりません。

 

 

仮に、他社のビジネスモデル特許が有効なものである場合、その特許の請求項を確認します。通常は、その特許の独立した請求項(主に、請求項1)を確認します。自社で実施している内容が、その請求項の要件をすべて満たす場合は、特許権の侵害となります。

例えば、Amazon社のAmazon GO についての特許(特許第6463804号)について、考えてみます。

Amazon GOは、無人のコンビニエンスストアで、専用のアプリをダウンロードしたスマートフォンを持って入店することで、レジに並ばずに商品を購入できる、というものです。

 

 

【請求項1】

 1つまたは複数のプロセッサと、前記1つまたは複数のプロセッサに接続され、前記1つまたは複数のプロセッサに実行させるプログラム命令を格納するメモリから構成されるコンピューティングシステムであって、

 前記プログラム命令は、前記1つまたは複数のプロセッサに、

 材料取扱施設内に配置された第1入力装置で入力された第1データを使って、前記材料取扱施設内の在庫場所近くのユーザの位置を判断させ、

 データストアから、前記ユーザに関連付けられ該ユーザによって取得されるもしくは取得された物品を識別するユーザ物品リストを取り出させ、

 前記第1入力装置または別の第2入力装置から、前記在庫場所に前記ユーザが到達する前に撮影された前記ユーザの少なくとも一部の第1画像を受信させ、

 前記第1入力装置または別の第2入力装置から、前記ユーザが前記在庫場所から離れた後に撮影された前記ユーザの少なくとも一部の第2画像を受信させ、

 前記第1画像と前記第2画像との比較の少なくとも一部に基づき、前記第2画像が前記ユーザに保持されている対象物を含むことを判断させ、

 前記第2画像が前記ユーザに保持されている前記対象物の表示を含むとした判断に応答して、前記対象物と前記在庫場所に関連付けられた在庫の物品との一致を判断させ、

 前記ユーザ物品リストに前記物品を表示する物品識別子を追加させる、コンピューティングシステム。

 

このAmazon GOの特許の内容を簡単に説明すると、

まず、ユーザの手を撮影し、さらに、ユーザが店舗内で商品を手にとった際にも、その商品と手を撮影し、そして、撮影した2つの画像を比較することで、ユーザが商品を手に取ったと判断し、商品が置かれていた位置をもとに、ユーザが手に取った商品を特定して、ユーザの購入リストに追加する、

 

というものです。

 

 

請求項は、

「材料取扱施設内に配置された第1入力装置で入力された第1データを使って、前記材料取扱施設内の在庫場所近くのユーザの位置を判断させ」、

「データストアから、前記ユーザに関連付けられ該ユーザによって取得されるもしくは取得された物品を識別するユーザ物品リストを取り出させ」、

「前記第1入力装置または別の第2入力装置から、前記在庫場所に前記ユーザが到達する前に撮影された前記ユーザの少なくとも一部の第1画像を受信させ」、

・・・

といったように、複数の要件にわけることができます。

 

ですから、自社のサービス内容と近い、他社のビジネスモデル特許を発見したとしても、請求項の1つ1つの要件を確認し、該当しない要件があれば、その特許権を侵害することにはならないと、判断することができます

2.ビジネスモデル特許を侵害すると、どうなるか

特許権を所有している特許権者は、特許権を侵害している他社に対して、損害賠償の請求や差止請求の訴えを裁判所に提起することができます

 

損害賠償は、特許が侵害されることにより特許権者が被った損害の支払いを求めるものです。また、差止請求は、特許権を侵害する行為の停止を求めるものです。特許権を侵害している商品の販売を禁止し、サービスの提供を禁止することができます。

3.自社のビジネスモデル特許を他社が侵害している場合に取り得る対応

自社のビジネスモデル特許を他社が侵害していると考えられる場合、いきなり訴訟を提起することもできますが、まずは、相手方に警告状を送付するのが一般的です。

警告状で、相手方が自社の特許を侵害していること、特許の侵害行為を停止すべきこと、期限を指定したうえで期限までに相手方の見解について回答を求めること、などを伝えます。

 

このように警告状を送付した後の相手方の対応次第で、自社と相手方で折り合いがつかない場合は、訴訟を提起することになります。

4.他社からビジネスモデル特許を侵害していると警告された場合に取り得る対応

他社のビジネスモデル特許を自社が侵害している可能性があったとしても、いきなり訴訟が提起されるわけではなく、多くのケースでは、相手方から警告状が送られてくることになります。

 

他社のビジネスモデル特許を侵害していないと確認できる場合は、相手方の特許権を侵害していないことを説明するなどの回答をします。この結果、相手方が納得をすれば、特に訴訟などに発展することはありません。こちらの見解と相手方の見解がそれぞれ異なっており、折り合いがつかない場合は、相手方から訴訟が提起されることになります。

 

訴訟で争うことはもちろんですが、こちらとしては、他社特許を無効にすることが考えられます。この場合、まずは、他社特許を無効にするための証拠を探すことになります。

具体的には、他社のビジネスモデル特許が出願されるよりも前に出願された特許文献を探すことになります。他社特許を無効にすることができる証拠がそろった場合は、特許庁に対して、その特許を無効にするための無効審判を請求します。

 

この他、他社のビジネスモデル特許を侵害していると思われる場合は、自社サービスの提供を停止したり、自社サービスの仕様を変更して特許権の侵害を回避することも可能です。

 

また、相手方と交渉して、その特許のライセンスを受けるのも1つの対応です。

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