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ビジネスモデル特許の知識

『いきなり!ステーキ』のビジネスモデル特許 判決から学べること

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『いきなり!ステーキ』は、株式会社ペッパーフードサービスが運営するステーキ専門店です。2013年12月に東京の銀座4丁目に1号店をオープンしたのをかわきりに、2019年現在、国内で400店舗以上を展開しています。

 

ここでは、『いきなり!ステーキ』の「ステーキの提供システム」の特許(特許第5946491号)についてご紹介します。

1.いきなり!ステーキ特許 出願から特許になるまでの経緯

株式会社ペッパーフードサービスは、2014年6月4日に「ステーキの提供システム」について、特許出願をしています。

 

出願時における請求項1は、以下の通りです。

 

【請求項1】

お客様を立食形式のテーブルに案内するステップと、お客様からステーキの量を伺うステップと、伺ったステーキの量を肉のブロックからカットするステップと、カットした肉を焼くステップと、焼いた肉をお客様のテーブルまで運ぶステップとを含むことを特徴とする、ステーキの提供方法。

しかし、特許庁での審査の結果、『請求項1にみられるような「お客様を立食形式のテーブルに案内するステップと、お客様からステーキの量を伺うステップと、伺ったステーキの量を肉のブロックからカットするステップと、カットした肉を焼くステップと、焼いた肉をお客様のテーブルまで運ぶステップ」というステーキを提供する手順という人為的取り決めを示すものであり、自然法則を利用しているものではない。』と判断され、『特許法第29条第1項柱書でいう発明に該当しない』として、拒絶理由が通知されています。

 

日本の特許制度では、ビジネスの進め方などのビジネス方法などの人為的な取り決め(つまり、ルール)は、「発明」ではなく、特許の対象にならないとされています。

特許庁の審査基準によれば、「発明」といえるためには、「自然法則を利用した技術的思想の創作」である必要があるとされており、経済法則、ゲームのルール、数学の公式、ビジネスを行う方法そのものは、自然法則を利用したものではないと、記載されています。

 

出願時における請求項1は、ステーキの注文を受けてから、ステーキをお客様に提供するまでの手順を記載しただけのものですから、ビジネス方法そのものであり、「発明」ではないと、判断されたわけです。この特許庁の判断は、妥当なものであると思われます。

この審査結果に対応するため、ペッパーフードサービス社は、以下のように請求項1の内容を補正しました。

 

【請求項1】

お客様を立食形式のテーブルに案内するステップと、お客様からステーキの量を伺うステップと、伺ったステーキの量を肉のブロックからカットするステップと、カットした肉を焼くステップと、焼いた肉をお客様のテーブルまで運ぶステップとを含むステーキの提供方法を実施するステーキの提供システムであって、上記お客様を案内したテーブル番号が記載された札と、上記お客様の要望に応じてカットした肉を計量する計量機と、上記お客様の要望に応じてカットした肉を他のお客様のものと区別する印しとを備えることを特徴とする、ステーキの提供システム。

 

下線を付した部分が、補正により新たに追加された記載です。

この補正により、請求項1は、立食形式のテーブルでステーキを提供するためのステーキの提供方法において利用される「ステーキの提供システム」についての請求項に書き換えられました。

この「ステーキの提供システム」は、以下の3つの要素を有しています。

 

  • お客様を案内したテーブル番号が記載された札
  • カットした肉を計量する計量機
  • カットした肉を他のお客様のものと区別する印し

 

このように請求項1を補正した結果、特許査定がだされ、2016年6月10日に特許の登録がされています。

2.特許になった後、特許異議申立てから特許の維持決定がされるまでの経緯

2016年6月10日に特許が登録されたのち、2016年7月6日に特許公報が発行されています。

 

日本の特許制度では、特許公報が発行されてから6か月以内に、特許権者とは異なる第三者が、本来は特許にすべきものではないものが特許になっているとして、特許異議の申立てをすることができます。特許異議の申立ての結果、取消しが決定されると、特許そのものが取消されることになります。


「ステーキの提供システム」の特許については、2016年11月に特許異議の申立てがされています。


 

特許異議の申立てがあると、特許庁の審判官により審理が行われます。審理の結果、特許を取消す理由があると判断した場合は、特許権者に取消理由が通知されます。

この特許についても、取消理由が通知されました。


取消理由は、『「札」、「計量器」、及び「印し」という物が示されているが、これらの物に、技術的特徴はなく、単に道具として使用して、各ステップを行うに過ぎない』から、『特許法第29条第1項柱書きに規定されている「産業上利用することができる発明」に該当しないものである。』というものでした。

これに対し、ペッパーフードサービス社は、以下のように請求項1の内容を訂正します。

 

【請求項1】

お客様を立食形式のテーブルに案内するステップと、お客様からステーキの量を伺うステップと、伺ったステーキの量を肉のブロックからカットするステップと、カットした肉を焼くステップと、焼いた肉をお客様のテーブルまで運ぶステップとを含むステーキの提供方法を実施するステーキの提供システムであって、上記お客様を案内したテーブル番号が記載された札と、上記お客様の要望に応じてカットした肉を計量する計量機と、上記お客様の要望に応じてカットした肉を他のお客様のものと区別する印しとを備え、上記計量機が計量した肉の量と上記札に記載されたテーブル番号を記載したシールを出力することと、上記印しが上記計量機が出力した肉の量とテーブル番号が記載されたシールであることを特徴とする、ステーキの提供システム。

 

下線を付した部分が、訂正により新たに追加された記載です。

訂正前の「ステーキの提供システム」は、以下の3つの要素を有するものでしたが、3つの要素を羅列しただけのものでした。

 

  • お客様を案内したテーブル番号が記載された札
  • カットした肉を計量する計量機
  • カットした肉を他のお客様のものと区別する印し

取消理由通知に対応するため、この訂正では、「計量機が計量した肉の量と上記札に記載されたテーブル番号を記載したものを出力することと、上記印しが上記計量機が出力した肉の量とテーブル番号が記載されたものである」との記載を追加して、「札」、「計量機」、「印し(シール)」が関連性を有するものであることを特定しました。

 

しかし、請求項の訂正は行われたものの、最終的に、特許庁は、「札」、「計量機」、「印し」が、『これらの物は、それぞれの物が持っている本来の機能の一つの利用態様が示されているのみであって、これらの物を単に道具として用いることが特定されるに過ぎない』と判断し、『特許法第2条第1項に規定する「発明」に該当しない』として、特許を取消す旨の決定をします。

 

この取消決定という結果を受けて、ペッパーフードサービス社は、知的財産高等裁判所に、取消決定の取消しを求める訴訟を提起しました(平成29年(行ケ)第10232号 特許取消決定取消請求事件)。

ペッパーフードサービス社は、訴訟において、以下のような主張を行います。

 

特許発明の「ステーキの提供システム」は、「札」、「計量機」、「印し(シール)」という物をその構成とすることによって、お客様のテーブル番号、お客様が要望する肉の量、特定のお客様に対応する情報を、店舗スタッフが認識することで、お客様の要望に応じて焼いたステーキを「他のお客様のものと混同が生じない」ように提供することができる。特許発明は、人間(店舗スタッフ)の番号に対する識別能力が高いという性質を利用することで、お客様の要望に応じて焼いたステーキを「他のお客様のものと混同が生じない」ように提供する、という一定の効果を反復継続して実現するための方法を示しているから、自然法則を利用したものである。

 

 

訴訟の結果、平成30年10月17日、知財高裁第2部(森義之裁判長)は、以下のように、特許庁の判断を覆す判断をしました。

 

『本件特許発明1の技術的課題、その課題を解決するための技術的手段の構成及びその構成から導かれる効果等の技術的意義に照らすと、本件特許発明1は、札、計量機及びシール(印し)という特定の物品又は機器(本件計量機等)を、他のお客様の肉との混同を防止して本件特許発明1の課題を解決するための技術的手段とするものであり、全体として「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当するということができる。したがって、本件特許発明1は,特許法2条1項所定の「発明」に該当するということができる。』

特許庁は、『いきなり!ステーキ』の特許について、札、計量機、シール(印し)を単に道具として用いることが特定されるに過ぎない、と判断したのに対し、知財高裁では、札、計量機、シールが、他のお客様の肉との混同を防止するという課題を解決するための技術的手段となっていると、判断したわけです。

 

この結果、特許庁が下した特許の取消決定が取消され、最終的に、この特許が維持されることとなりました。

3.特許異議申立てから知財高裁での訴訟までの経緯から学べること

ビジネスモデル特許といえば、IT(情報技術)を活用したものであることが一般的です。

しかし、この『いきなり!ステーキ』の特許のように、ITを活用したものでなくても、ビジネスモデル特許を取得できる可能性があることが分かります。

 

『いきなり!ステーキ』の特許は、ステーキの提供方法(ビジネス方法)を実行する際に利用することのできるシステムに関するものです。

このシステムは、「札」、「計量機」、「印し(シール)」の3つの要素を有するものですが、これらの要素が相互に関連しながら、課題を解決できるものであるとして、「発明」に該当すると判断されています。

 

他のビジネス方法においても、複数の物を組み合わせることで、より効果的にそのビジネスを行うことができる場合は、それがITを活用したものでなかったとしても、これらの物の組み合わせからなる「システム」が特許の対象になると、言えそうです。

4.いきなり!ステーキ特許のビジネスモデル特許としての有効性

『いきなり!ステーキ』のビジネスモデルは、立食形式のテーブルにて、お客様が希望する量のステーキを提供する、というものです。

今回のビジネスモデル特許があったとしても、他社が、立食形式のテーブルにて、お客様が希望する量のステーキを提供したとしても特許権を侵害することにはなりません。

 

「札」、「計量機」、「印し(シール)」の3つの要素からなるステーキの提供システムを利用して、初めて特許発明を実施することになります。

 

では、『このビジネスモデル特許は、あまり意義がないのか?』というと、そうではありません。

多くのお客様にステーキを提供するわけですが、お客様によって、お肉の種類も量も違いますから、オペレーションに工夫がないと、提供するお皿を間違って、違うお客様に提供してしまう、といったようなことが起こります。

 

このビジネスモデル特許は、ステーキを提供する際のオペレーション上の課題を解決するものです。他社は、このビジネスモデル特許を使用できないわけですから、『いきなり!ステーキ』とは違う方法で、ステーキを提供する必要が出てきます。うまく工夫ができなければ、ミスも発生するでしょう。

例えば、『いきなり!ステーキ』の特許では、計量機が、計量した肉の量とテーブル番号を記載したシールを出力することになっていますが、肉をカットする際に、肉をカットした店員が肉の量とテーブル番号をシールに手書きする、という方法をとれば、特許権侵害を回避することができます。

しかし、そのような方法だと、ミスも発生するでしょうし、手間もかかるという問題がでてきます。

 

ビジネスモデルそのものを特許にすることはできません。

ですが、そのビジネスモデルをより効率的・効果的に行うための技術的な工夫について特許を取得することができれば、他社よりも、効率的・効果的に、そのビジネスモデルを実行することができます。

 

結果として、それが、お客様へ提供するサービスの質や、オペレーションの効率、コストなどの点で、他社よりも有利な状況でビジネスを進めていくことができます。

いきなりステーキ特許

(特許5946491号 特許権者:株式会社ペッパーフードサービス 出願日:2014年6月4日)

 

お客様を立食形式のテーブルに案内し、お客様から伺ったステーキの量を肉のブロックからカットし、カットした肉を焼き、焼いた肉をお客様のテーブルまで運ぶ、ステーキの提供システム

  1. お客様を案内したテーブル番号が記載された札
  2. お客様の要望に応じてカットした肉を計量する
  3. お客様の要望に応じてカットした肉を他のお客のものと区別する印し

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  • 接客スタッフ等は、どのテーブルのお客様がどのような注文をされたかを把握できる
  • 量のみが異なる肉が多く厨房等に並ぶことがあっても、それを区別して取り扱うことができる

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