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特許の知識

特許異議申立制度とは?

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1.特許異議申立制度とは?

特許異議申立制度とは、どのような制度をいうのでしょうか。

 

特許異議申立制度とは、特許公報が発行されてから6ヶ月以内であれば、誰でも、特許庁に対して特許異議の申立てをし、特許の取消しを求めることができる制度です。なお、特許査定・特許審決がだされた後、特許料を納付すると、約2~3週間で特許公報が発行されます。

 

特許異議の申立ての結果、本来であれば特許が認められるべきではなかった発明について、誤って特許が認められていた、と特許庁で判断された場合は、特許の取消しがなされます。特許が取消されるということは、特許権が消滅することを意味します。

 

ですから、自社にとって都合の悪い他社特許を発見した場合に、その他社特許に対して特許異議の申立てをし、特許を取消すことは有効な手段であるといえます。

一方で、自社の特許が他社にとって都合が悪ければ、他社から特許異議の申立てをされることもあります。

 

特許庁によると、2015年4月~2018年3月末までに特許異議申立てがされた3,093件のうち、特許権の範囲が訂正されずにそのままの形で維持されたものが1,078件(34.9%)、特許権の範囲が訂正されることで維持されたものが1,579件(51.1%)、異議申立の対象となっていた請求項の全て又は一部が取り消されたものが343件(11.1%)、異議申立の対象となっていた請求項が全て削除されたことにより異議申立が却下されたものが32件(1.0%)とのことです。

https://www.jpo.go.jp/system/trial_appeal/shubetu-tokkyo-igi/igi_moushitate_tokei.html参照)

 

 

つまり、特許異議の申立てをされたもののうち、約3分の1は、申立てをしたにもかかわらず、特許がそのまま維持されますが、残りの約3分の2は、特許権の権利範囲を狭める又は特許権を取消すこと等の一定の効果が得られています。

2.特許異議の申立てができる理由は?

特許異議申立書には、取消しを求めようとする特許が、どのような理由で取消されるべきかを記載する必要があります。取消しを求めることができる理由としては、主に、以下の理由があります。

 

  • 新規性
  • 進歩性
  • 特許法第29条の2
  • 特許法39条
  • 実施可能要件
  • サポート要件

 

例えば、自社にとって都合の悪い他社の特許を発見した場合は、特許調査を行う、或いは、論文や専門書の調査を行うことで、他社特許の新規性や進歩性を否定する証拠を探し、特許異議の申立てをすることができます。

3.特許異議の申立てをするには?

それでは、特許異議の申立てをするには、どのようにすれば良いのでしょうか。

 

特許異議の申立ては、特許公報が発行されてから6ヶ月以内に、特許異議申立書を提出することにより行われます。

 

特許異議申立書には、「特許異議の申立てに係る特許の表示」、「特許異議申立人」、「代理人」(代理人がいない場合は、記載の必要はありません)、「申立ての理由」、「意見書提出の希望の有無」、「証拠方法」を記載します。

 

「特許異議の申立てに係る特許の表示」の欄には、特許異議の申立ての対象となる特許番号と請求項を記載します。特許の複数の請求項のうち、すべての請求項を異議申立ての対象としなくてもよいです。

例えば、下記のように記載します。

 

1 特許異議の申立てに係る特許の表示

  特許番号      特許第6000000号

  請求項の表示    請求項1~5

「特許異議申立人」の欄には、特許異議申立人の住所、電話番号、氏名等を記載します。法人が特許異議申立人となる場合は、法人の住所、電話番号、法人の名称、法人の代表者名等を記載します。

例えば、下記のように記載します。

 

2 特許異議申立人

  住所(居所)    東京都千代田区岩本町〇丁目○番○号

  電話番号      03-○○○○-○○○○

  氏名(名称)    〇〇〇〇株式会社

  代表者       山田 太郎

 

なお、特許権者は、特許異議申立書の内容を確認できますから、誰から特許異議の申立てをされているのかを把握できます。特許権者に申立人が自社であることを知られたくない場合は、弁理士等の名義で申立てをすることも、実務上、行われています。

なお、いつも特許出願を依頼している弁理士に異議申立人になることを依頼すると、公開されている特許出願の情報から、特許異議の申立ての張本人が誰であるかを予測できてしまいますから、いつも依頼している弁理士とは違う方に異議申立人になっていただいた方がよいかと思います。

 

「代理人」を介して特許異議申立てを行う場合は、「代理人」の欄も設けます。

「申立ての理由」の欄には、どのような理由により取り消しを求めるのかについての理由を記載します。

具体的には、新規性、進歩性、特許法第29条の2、特許法39条といった特許要件を満たしていないこと、実施可能要件、サポート要件といった記載要件を満たしていないことなどを説明します。

 

 

「意見書の提出の希望の有無」の欄には、「希望する」又は「希望しない」を記載します。

特許異議申立ての結果、審判官の審理により取消理由があると判断された場合は、特許権者に取消理由が通知されます。特許権者は、取消理由に対する意見書を提出するとともに、請求項の記載を訂正する機会が与えられます。特許権者からこの訂正請求がされた場合に、特許異議申立人が意見を述べる機会を希望するのか、希望しないのかを記載するのが、この「意見書の提出の希望の有無」の欄となります。

例えば、下記のように記載します。

 

4 意見書提出の希望の有無  希望する。

「証拠方法」の欄には、異議申立ての理由の根拠となる証拠を記載します。特許権に係る発明が新規性や進歩性を有しないことが、申立ての理由となる場合は、先行する特許文献や論文等が証拠方法として記載されます。

例えば、下記のように記載します。

 

5 証拠方法

(1) 甲第1号証:特開2000-100001号公報

 

 

「添付書類又は添付物件の目録」の欄には、特許異議申立書に実際に添付するものを記載します。

例えば、下記のように記載します。

 

6 添付書類又は添付物件の目録

(1) 甲第1号証写し          正本1通及び副本2通

(2) 特許異議申立書          副本2通

4.特許異議の申立ての手続きの流れは?

特許異議申立書が特許庁に提出されると、異議申立書の副本が特許権者に送付されます。その後、審判官3名の合議体により審理が行われます。審理の結果、特許が取消理由を有すると判断された場合は、特許権者に対して取消理由通知がなされます。特許権者は、取消理由通知の発送の日から60日以内であれば、意見書及び訂正請求書の提出をすることができます。

 

特許権者から訂正請求書が提出された場合で、特許異議申立人が意見書の提出を希望していたときは、特許異議申立人に意見書を提出する機会が与えられます。特許異議申立人は、意見書において、訂正後の請求項においても、取消理由を有していることを主張することができます。

 

特許庁では、訂正後の請求項について、取消理由を有しているか否かの審理を行います。その結果、取消理由が解消していれば、特許は維持されます。取消理由が解消していなければ、特許は取消されます。

 

特許庁からの取消決定に不服がある場合は、知的財産高等裁判所へ取消決定取消訴訟を提起することができます。

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